9月21日に石川県の能登半島を襲った記録的な豪雨。輪島市久手川町を流れる塚田川の氾濫(はんらん)で、土砂や流木が押し寄せた大工の道中一雄さん(74)宅は、居間や台所などの窓が割れ、床上70センチメートルまで浸水した。道中さんは「命があっただけでもありがたいが、水は全部奪ってしまう。ため息しか出ない」と肩を落とす。
豪雨から1カ月以上が経ったが、家の周囲は土砂が残り、所々で道も寸断され、電気も復旧していない。納屋が流されて大工道具も失ったが、妻と2人、市内の小学校の体育館で避難生活しながら、泥をかき出し、家の修理を始めている。
22日、道中さんは、仕事仲間から借りた電動工具を使い、流された窓をふさぐ作業を淡々と続けていた。「仮設(住宅)でも当たればいいが、なるようにしかならんわ。雪が降るまでに少しでも家を直したい」(伊藤進之介)